あらゆる家具の中で、最も単純にして、奥深いものはなんでしょう。

それはおそらく椅子です。

椅子の用途は、ただ”人が腰掛ける”それしかありません。

しかし同時に、椅子は人間にとって最も身近な家具といっても過言ではないのです。人は人生の約3分の1は何かに腰掛けて過ごしていると言われるほどですから。

これほどまでに身近な故に、長い歴史の中であらゆる椅子がつくりだされ、使われてきたのです。

そんな椅子は、当然、多くの建築家・デザイナーたちの設計対象にもなりました。いつの時代であろうと、ヒトの生活と椅子は切っても切れない関係にありました。

それでは、長い歴史の潮流の中で、受け継がれ、傑作といわれ続けてきた不朽の名作椅子を、余すところなく紹介しましょう。きっとあなたも虜になるはずです。


細部にまで完璧を追求。ルートヴィヒ・ミース ・ファン・デル・ローエの椅子

まずはじめに紹介するのはミース・ファン・デル・ローエによって設計された椅子です。

ミースの画像

ミースは20世紀のモダニズム建築を代表する建築家。

ル・コルビジェ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の三大巨匠と呼ばれ、時代が変わっても色褪せない洗練されたデザインで世界中の人を今なお魅了し続けています。

ミースは、大学での正式な建築教育ではなく、地元の職業訓練学校でドラフトマン(製図工)としての教育をうけました。

のちに建築家ペーター・ベーレンスの事務所で実務経験を通して建築を学んだミースは、次第にその手腕を発揮していきます。

”God is in the detail”(神は細部に宿る。)という信念のもと、ディティールにもこだわった、隅から隅まで洗練された意匠を目指しました。

そんなミースの哲学は、彼のチェアデザインにも垣間見ることができます。

Barcelona®︎ Chair

1929年のバルセロナ万国博覧会のドイツ館をミースが設計した際に、そのインテリアの一部として設計されました。

スペイン国王夫妻を迎え入れるチェアとして設計されたこともあり、その特徴的なX字型のフレームデザインは、古代ローマの権力の象徴であった”Curule Seat”(最高位の椅子)のデザインをベースにしています。

現在、製造はKnoll社によって一台一台手作業で行われています。

Brno Chair

ミースの作品はどれも、あらゆる要素を必要最小限までに削ぎおとしてから、細部にわたるまで洗練させるという方法で設計されています。

そのため、どの作品も息をのむような美しさと精巧さを持ち合わせています。

ミースの代表作の一つであるトゥーゲンハット邸のために設計されたBrno Chairも、この昇華のプロセスを経て、非常に無駄のない完璧な形に仕上げられ、開放的なその空間にうまく調和しています。

MR Chair

1927年のシュツットガルト郊外ヴァイセンホーフの丘において行われた住宅展覧会においてミースが発表したものです。

一筆書きできてしまうほどシンプルなその構造は当時非常に新しいもので、冷たく粗野なスチールパイプのイメージを壊す画期的なデザインでした。


これぞ究極の機能美。ル・コルビジェの椅子

続いて、最近話題の、ル・コルビジェです。

コルビジェの画像

ミースと同様、近代建築の三大巨匠の1人で、スイスで生まれ、フランスで主に活躍した建築家です。

ル・コルビジェはペンネームで、本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリといいます。長いですね。

建築界では神格化されているほどの人気を持っているコルビジェですが、その名声もやはり素晴らしい彼の実績を反映したものなのでしょう。

建築に関しては言うまでもなく名作揃いですが、彼のデザインした家具、特にLCシリーズにおいては、一度でいいから実際にお目にかかりたいと思わせるような魅力に溢れています。

LC1

コルビジェが従兄弟のピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンと共同デザインをしたチェア。

無駄な装飾を排し、単純化された構造ながらも一切退屈さを感じさせないデザインです。

背もたれが姿勢に応じて自由に動き、機能美を持ち合わせた作品です。

LC2

おそらく多くの人がどこかで目にしたことがあると思う。(椅子というよりソファだけれど、素晴らしいものであるのは変わりないので)

通称”グランコンフォール”

最小限の構成で最大の快適性を実現することを目的としてデザインされているだけあって 、無駄が一切なく、どんな建築空間にもしっかりと融けこむ。

LC4

通称”シェーズ・ロング”

コルビジェが「休養の為の機械」と呼んだことでも知られる寝椅子。

ヒトの体の曲線にフィットするようにデザインされたシートのカーブと、弓形パイプの自由自在な可動性は、快適な座り心地をもたらします。

その美しさゆえに、ニューヨーク近代美術館にも所蔵される作品です。

LC4の画像

LC5

1943年にコルビジェが妻のイヴォンヌとともにパリのアパートに引っ越した際、自宅のリビングルーム用にデザインしたソファ。

クッションを支えるフレームは必要最小に抑えられているため、クッションの厚みが強調され、一目でその快適性を伺えるようなデザインとなっている。


より多くの人に、より良いものを。チャールズ&レイ・イームズの椅子

チャールズ・オーモンド・イームズ Jrは、アメリカ合衆国の建築家、デザイナー。

イームズ夫妻の画像

妻のレイ・イームズと共にプラスチックや合板、金属などの素材を用いて、素晴らしい工業製品を数々残しました。

近代建築に対する情熱が度を越してしまったせいで大学の建築学科を退学となってしまうほど、彼の建築に対する考え方はモダンで、可能性を秘めており、当時にはまだ受け入れられないものでした。

”Getting the most of the best to the greatest number of people for the least”(最高の品を、より多くの人に、より手軽に)の言葉の通り、イームズ夫妻は、人々が高品質の製品をもっと身近に感じられるように、家具の大量生産に向けた製作にも尽力しました。

Eames Plastic Chair

イームズ夫妻の代表作。

今や、そのデザインは世の中に浸透し、万人に愛される有名な椅子となりました。

おそらく1度や2度は見たことがあるのではないでしょうか。

ヒトの体型にフィットする柔らかいカーブを描いたプラスチックのシートシェル(曲面構造)はとても優しい印象を与えます。

またシートシェルと、ベースには様々な色や種類があり、組み合わせによって印象を変えられる為、非常に創造性あふれたチェアです。

Eames Plastic Chairの画像1
Eames Plastic Chairの画像2
Eames Plastic Chairの画像3

Eames Plastic Chairの画像4

1700 Side Chair & 1730 Armchair

1961年、NYCの”La Fonda Del Sol”というレストランを手がけるアレクサンダー・ジラードの依頼によって、イームズ夫妻が設計した、ファイバーグラスを用いたチェア。

通称”La Fonda Chair”

DCM

1946年の秋に発表されるや否や、瞬く間にその素晴らしいデザインが認められた。

あらゆる体型に適合するシートと、ゴムのマウントによる形状変化によって、布張りでない椅子としては珍しく、最高の快適さをもたらした。

華奢なベースのシルエットも非常に上品。

DCMの画像1
DCMの画像2
DCMの画像3

Eames Aluminum Group

1958年に発表されて以来、その優美なシルエットはどのような場面にも融けこみ、人々の人気を博した。

当初、屋外で使うことを目的に依頼を受けたイームズ夫妻は、どうせならと屋外でも屋内でも使えるようにと設計したという。

つづく